泣いた赤色、うたかたの青
あなたはテーブルの上の青い魚を眺める。

まるでいつか写真で見たカワセミのような
美しいエメラルドグリーンから

深い海のような
コバルトブルーへのグラデーション。


物憂げに沈んでいた魚は、
あなたが指を近づけると
ぱたぱたと鳥のつばさの羽ばたきのようにヒレを動かした。


「マスター」


気になったあなたはカウンターの奥へと声をかけて、


「この綺麗な魚は何と言うのですか?」

「ああ──それは闘魚です。ベタという魚ですよ」

「とうぎょ?」

「ええ、闘う魚」

「これは何をしているのでしょう?」


あなたが尋ねると、
マスターはカウンターの奥にある扉を振り返った。


「ねえ、ちょっと! お客さんがベタが何をしているのか、って」


マスターが声をかけると、扉が開いて、中から若い女性が現れた。

この女性も、イケメンの若いマスターと同じくらいの年齢だろうか。


「この店は夫婦でやっていまして。魚は妻の担当でしてね」


マスターはそう言って微笑んで、エプロンをつけた女性はあなたのテーブルの前まで歩いてきた。
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