泣いた赤色、うたかたの青
綺麗な女性だった。
黒々とした髪が、白い肌を引き立てている。


「いらっしゃいませ。このお魚も売り物なんですよ。この子が気に入りました?」

あなたはちょっとびっくりする。

「ここは魚も買えるのですか?」

「はい。カフェの中に熱帯魚ショップがあるんです。これはフレアリングですね。ヒレを震わせて威嚇しているんですよ」

「闘魚だから?」

「ええ」


それから女の人は、ベタという美しい熱帯魚の飼い方について詳しく教えてくれて、あなたは飼ってみようか、なんて気分に少しだけなったりして、


「お待たせいたしました」

マスターが抹茶とお菓子を運んでくる。

「何かあったらまた声をかけて下さい」

女の人はそう言って、
「ごゆっくり」と会釈して

つややかな黒髪を揺らし扉の奥へと消えた。
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