イジワルな俺様の秘密ライフ
「ごめん……
苦労させてしまうとわかっているんだ」
苦労……
そうだよね、御曹司のお相手がこんな平民出自の私に務まるはずがない。
私はそれ以上を聞きたくなくて、海翔さまに気付かれないよう、
そっと耳をふさいだ。
「だからオマエが俺を好きになるまで待つつもりだった。
だけど、アイツが出て来て……俺は柄にもなく焦ったのかもしれない」
かすかな低い音が伝わってくるなか、ざーざーと血流の音に耳をすます。
心はずきずきと痛むけど、耐えられないほどじゃない。
なぁんだ、失恋って、こんなもんか。
涙さえ出ない。
「衆目の前で告白すれば、オマエが断れないかも……なんて。
浅はかだな……って聞いてんのか、あや」
耐えられない胸の痛みは、じくじくと続く。
このまま少しずつ痛みは強くなるんだろうか。
それとも、いつまでもいつまでも痛みが続くんだろうか。
「あや?」