Milky Way
あの女が家を出る日。

この数日、物を片付ける音がうるさいくらい聞こえていた。

憔悴している女の姿が少しだけ痛々しく見える。

だけど自業自得。

私は味方になどなれないし、なるつもりもない。

引越しのトラックが来てあの女の荷物をすべて乗せきったところで、再び玄関を開く音がした。

私はそっと階段を降り壁に隠れ、その様子を伺う。


パパと話をしているようだ。

内容は別れの挨拶。

離婚の手続きなどは私の承知するところではない為知らないが、パパ達の話を聞くところ、もう復縁はなさそう。

あの女も諦めた風な口調。


「じゃあ、行くわ。」

「元気でな。」


そういうとあの女は玄関の扉に手を掛けて家を出た。

聞こえる引越しのトラックのエンジン音

私は途端に玄関を飛び出していた。

何をしようと思ったわけじゃない。

あの女の最後を見てやろうと思っただけ。

走り出したトラックが消えるまで家の前の道路から見てやった。

なぜか一筋だけ涙が零れた。

(こんなの嬉し涙なんだからっ!)

そう強がってみる。

これで私は平穏な毎日へと戻れる。

悪魔からの開放。

だけど流した涙の意味…きっとあの女に少しだけ情が移っていたのかもしれない。
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