Milky Way
「さっきの…聞いたの?」

真面目な表情の彼女。

(…さっきの。)

シンの耳にもちゃんと入っていたんだね。

忘れることなど出来ない鮮明な出来事。

悪魔のような言葉達。


涙が次から次へと溢れては零れ落ちていく。


シンは一度きつく唇を噛み締めてからそっと口を開くと私に告げた。







「琴…、私たち……別れる…?」





(え…)




心をえぐるような激痛が走る。

止まらない涙。

無意識のうちに繋いだ手に力が入る。


「琴が苦しいのが…あたしには1番つらいの。あたしと一緒にいることで、琴が苦しいならあたし…恋人じゃなくても……我慢できるよ?…あたしにとって1番大切なのは琴だもん。」


優しい口調で言うシンだけど見つめれば瞳からは一筋の涙が頬を伝っていた。

握り締める彼女の手が強くなる。



「…ヤダ…っ、一緒にいられないなんて…ヤダぁ。離れ離れはやだよぉ…一緒にいたいよぉ……っ!ひっく、なんで…そんなこと言うの…ぉ…?」



引き寄せられた体がそのままシンの力いっぱい抱き締められた。

私も精一杯抱き締め返す。



「ごめん…っ!琴、ごめんね。ごめんね…っ。」


「ふぇっ、うわぁぁんっ!ひっく、えぇぇん…っ!」



シンの腕の中で泣いた。

シンはしきりに謝っていたけれど何に謝っていたのかな。

ひどい事言ったって謝ったのかな。

それとも他のことで謝ったの?


私は聞けなかったけど、どうか謝らないで。

シンは何も悪いことしてないじゃない。



生きていれば大切な気持ちが見えなくなる時だってある。

それでも何度でも思い出さなくちゃいけないの。


自分の中で思い出せなくなったら、その時初めて失う。

すべてのものが泡になって消えてしまうの。


この腕が永久のものだって本当に本当に信じたい。
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