あめとてるてる坊主
 そして私は、あのとき彼が貸してくれたタオルを、もう1週間経つというのに返せずにいた。

 毎日カバンに入れているのに。

 息が詰まる鼓動の高鳴りは、私を焦らせるだけで、勇気はくれない。

 簡単なことのはずなのに、こんなにも難しい。

 今までできていた、彼を盗み見ることさえできないほどに、私は緊張していた。

 だから今日も――返せなかった……。



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