『Badend Story〜2人のジャンヌ・ダルク〜』(歴史ダークファンタジー)
そう。その悲鳴とは、この時代で唯一俺と言葉を交わしたジャンヌの悲鳴だった。



(ジャンヌだ…ジャンヌが危ない)



俺は咄嗟に自分の置かれた状況を忘れ、立ち上がり、ジャンヌの声の方向へと走った。



“ダッダダダ”


“ガサガサ”


“ダッダダダ”



俺は、目の前の草木を掻き分けながらジャンヌの声だけを目指し、走った。



“ガサガサ…”


“ダッダッダ”…



『嫌放して』


『誰かぁ〜』



ジャンヌの声が次第に大きく聞こえ始め。俺は、ジャンヌとの距離を縮めて行った。



“ガサガサ”



『こんな森の中で叫んだって、俺達“極盗賊”以外は出て来やしねぇよ〜。』


『ご、極盗賊貴方達が、あの有名な極盗賊なの』

『解ったら大人しく金目の物を置いて行きな』


『そ、そんな物、持ってません。』


『嘘を付くと為になんねぇぞ?』


『ほ、本当に何も持ってません。』


『そうかじゃあ、今お前が持っている首飾りは何だ?』


『そりゃ、随分と綺麗な宝石じゃねぇのか?』


『こ、これは…“友達”の…』


『つべこべ言ってねぇで、さっさと渡しやがれってんだ』



俺が、最後の草木を掻き分けると、目の前に、ジャンヌと、ジャンヌを襲っている5人の男達を見付けた。


その光景を目の当たりにした俺は咄嗟に俺のすぐ横に生えていた木の枝を取った。


そして、その枝に両手で触れ、魔法化学の力で、木の枝の硬度を極限まで高め、その枝を持ちながら、ジャンヌ達の前へと姿を現した。



『キャァ〜放してったら〜』


『おいテメェ等何してんだ』



すると、ジャンヌやジャンヌを襲っていた奴ら全員が一斉に、俺の方に顔を向けた。
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