記憶 ―夢幻の森―

「…ありが…とう…」

ハルカが俺の耳元で呟くと、
何だか急に切なくなって、

「…いや…」

と返すのが精一杯だった。



「…キースもさっき、精霊さんにあたしと同じ事言われてた…。」

「…あぁ…」


ぎゅっと俺を抱き締めながら、


「…キースも、寂しいの…?」

と聞いた。

俺はそんな単純な質問に、
ふっ…と笑って、

でも、少し躊躇いながら…


「…あぁ。…寂し…かった…」


そう
初めて…、

心の内を、
ずっと誤魔化してきた感情を…

他人に漏らした。


認めてしまったら、
急に目頭が熱くなって、
俺は静かに瞳を閉じた…。



自分の心に、自由を与えてやるという事は、
なんて難しいのだろう。

『羽根がないから飛べない』
周囲に言われ続け、過敏に自分の可能性を縛ってしまったハルカ。

飛べるかもしれないよ…?


俺の場合は…、

『孤独』という名の『罰』に、
自分自身を縛りつけて…


「…でも、今はハルカが居るから寂しくない…」


そう…
きっと、
…今だけは―――。


「…キースは、あたしが守ってあげるね?」

「…有り難う…」


< 105 / 221 >

この作品をシェア

pagetop