記憶 ―夢幻の森―
「…だけど。本来の姿に戻れば、主の生命力の消費も激しい…。」
「それで、気を失ったのか…?」
「そうね…」
幸いにも傷からの出血は止まり、静かに眠るハルカの頬を俺は撫でた。
呼吸も安定を取り戻し、
『ただ疲れて眠っている』
そんな様子に見えた。
普通の妖精には、当たり前な事なのかもしれない。
しかし…
ハルカにとっては、命に関わる事なんだ。
それで、
自分は『疫病神』なんだと…、
コンは言ったんだな…。
「…コン?」
俺は後ろを振り返りながら呼び掛ける。
普段より少し上に向けた視界には、すでに姿がない。
そこから下へと、地面へと焦点をずらすと…
馴染みのある姿で、
涙を溜めて、
地面へと俯いていた。
ゥワン…
『……キース、俺を…嫌いに…なったかぁ…?』
今にも泣き出しそうなのを必死に堪え、弱々しく鳴いた。
「――…なってない。」
俺はふっと表情を緩めて、溜め息を漏らす。
『…でも、エマに聞いただろぅ?…俺…すごく悪い子なんだ…』
プルプルと体を震わせ、地面を見つめたまま俺とは目を合わそうともしない。