記憶 ―夢幻の森―


俺は、
もう知っていたんだ。


覚めない「夢」は、

――…存在しないんだって。




「…ハル…カ、どうして…」

どうして、
そんな事を言うんだ…。

どうして、
言ってしまったんだ…。



「…あたしは…忘れないから!あたしも、もう一回ちゃんとキースと友達になるから!」


ハルカは、必死に自分の気持ちを俺に告げる。

俺は力一杯、首を横に振った。


無理なんだ。
俺がこの世界を去ったら…

もう、
きっと逢えない。



「……あたし、キースを探すよ…?また逢えるように…。逢えるよ!」

「――…!!」


ハルカは、

――…分かっていた。


俺は瞳を見開いたまま…。

見つめるハルカの姿が、
自分の涙で霞んでいく。


きらきらと輝く大地の上で、
ハルカは笑っていた。



「…もう…会えないかもしれない…。それなのに、俺に…ハルカたちの記憶を無くせ、とそう言うのか…?」


また、独りなんだ…

他の誰でもない、
ハルカに現実を突き付けられて、俺は悲しかった。


俺は一気に気力を無くして、

自分へと構えていた剣を、ずるりと下ろした。


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