記憶 ―夢幻の森―
「あ、ハルカ。いつもの薬、ちゃんと飲みなさいね?」
食事も終わり、ユリネさんが食器を片付けながら、ハルカに言った。
「あ…、うん。」
ハルカは、自分のポケットから見覚えのある小瓶を取り出し、テーブルにコトリと置いた。
それは、先程の花畑でくんでいた、花たちの蜜の混ざった露。
「…ハルカは、…どこか悪いのか…?」
俺は聞いてもいいものか、躊躇いながら口にした。
まさか、ハルカ自身が必要などとは夢にも思わなかった。
こんなにも元気そうなのに…。
『この露は、怪我や病気に少し効く…』
そうハルカは花畑で言っていたのだ。
ハルカは、もじもじと歯切れの悪い言葉を繰り返す。
「なんだ、キース君に言ってないのか?じゃあ、本当の友達にはなれないなぁ、ハルカ。」
セイジさんが優しくハルカに問う。
「…だって、…嫌われちゃう…」
ハルカは、そう弱々しく肩をすくめた。
『初めての友達』、
その言葉が俺の脳裏に浮かぶ。
里の人々の不審な態度と、ハルカが自分が嫌われていると言っていた事とも何か関係しているのだろう。