うそつきなライオン
理想


「ねぇ、名前なんていうの?」

あたしが訊くと、少年はキョトンとして言った。

「みぅが決めていーよ?」

「え‥あたしが?」


なんで!?と思ったけれど、少年が仔犬のように目をキラキラさせて「名前」というご褒美を待つもんだから、あたしは一生懸命考えた。


「千雨‥」

「ちさめ?」

「千の雨って書くの。
今日、あたし達が出逢ったとき雨が降ってたから。」


妄想が行き過ぎたか‥と少し恥ずかしくなって、少年の顔が見れなくなってしまった。


「良いじゃん!かっくいー!」

ニパッと笑って、少年はこの日から「千雨」になった。

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