フォトグラフ




物心ついた頃から母親に優しくしてもらった覚えはない。



いや、パーティーなどでは母親ぶって優しい素振りを見せてくるが、


家では24時間監視されているようなものだ。



窮屈でしかたなかった。



そんな時、『ゆうちゃん』に出会った。



本当に偶々(たまたま)だった。





あの時は母親が用事で出掛けていた。



皐月に母親がいない間もピアノの練習をするように言い付けてはいたが、


めったにない「自由」な時間を遊びに使いたいと思うのは、
子供である皐月には仕方なかった。



遊びと言っても普段勉強やピアノなどに明け暮れている皐月は、

公園の場所など知るはずもない。



とりあえず外に出ようと思った。


家政婦さんは母親がいない時はこない。

疑い深い母親は何か盗まれては困ると自分がいる時にしか呼ばないからだ。



シーンとする家を出て、外に飛び出した。



自分一人で外に出るのは初めてだったので、少し「外」の世界に恐怖を感じたが、


自分の手にした自由に後押しされ、自分の思うままに道を歩いていった。




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