フォトグラフ
「國くん、そろそろ君も用意して!
まず先に衣装合わせるから…、
谷(たに)ーぃ!
お願ーい!」
多分、この現場で偉いだろう女の人がそう言いながら近づいてきて、手を上げながら「谷さん」を呼んだ。
多分「谷さん」という人は衣装担当なんだろう。
「は~い。」
軽い返事を返し、若い男の人が寄って来た。
髪は金と茶の間な感じで、パーマをあてて少し遊ばしてあり、スラッと細身な、けどちゃんと筋肉もついてる、そんなモデルの理想体型なこの人が「谷さん」らしい。
俺は率直に「もったいない。」と思った。
絶対モデルの方が売れる、と。
この仕事を始めてからいろんな人に出会ったが、スタッフさんやカメラマンさんの中で、
「なんで、モデルしないの!?」
と、思える人に何人か出会った。
しかし、モデルに向いていると思った人だけでなく、スタッフやカメラマンは皆、自分の仕事に誇りを持っている、という顔をしていて、
『彼ら(彼女ら)自身』が選んだ仕事をしている時が一番「格好いい」顔をしているのだ。
それを知っている俺は、彼ら(彼女ら)になんでモデルにならなかったのかなんて聞かないし、聞く必要がない。