風のおとしもの。





「んーっ、美味しかったー!」


ありがとうございましたーという声を背に、クーラーの効いた店内を出る。
むわっとする熱気。
今年も日差しが強い。


「もうあそこには行けないなぁ」

「そうですね」

「雛ちゃんのせいだからね」

「美紀さんのせいです」


むっと睨み合うと、美紀さんの口元にクリームがついていた。


「ここ、クリームついてますよ」

「嘘っ」


美紀さんは慌てて口元を拭う。
あぁ、のびてしまいました。


「これ、使って下さい」

「………ありがと」


一瞬躊躇したみたい。
でも素直に受け取り、私が指差したところを中心に口を拭った。
美紀さんはバッグから鏡を取り出し、顔を確認しだす。
……それにしてもおっきな鏡です。


「…洗って返すから」

「いえ、構いませんよ」

「美紀が構うの!」

「………わかりました」


貸してあげたのに怒られるなんて、ちょっと理不尽です…。


「あ、美紀雑貨屋さんも行きたいんだった。雛ちゃん付き合ってよ」

「…私、ショッピングはちょっと……」

「何よ、根に持ってるわけ?」

「そういうのではないですが…」

「じゃあ決まり!」

「わっ、美紀さん待って下さい!」


急に歩幅を早くする美紀さんにもたつく。
一緒に行こうって誘うくせに一人で突っ走る。

本当に、なんて自由な方なんでしょうか…。





< 330 / 382 >

この作品をシェア

pagetop