風のおとしもの。
「んーっ、美味しかったー!」
ありがとうございましたーという声を背に、クーラーの効いた店内を出る。
むわっとする熱気。
今年も日差しが強い。
「もうあそこには行けないなぁ」
「そうですね」
「雛ちゃんのせいだからね」
「美紀さんのせいです」
むっと睨み合うと、美紀さんの口元にクリームがついていた。
「ここ、クリームついてますよ」
「嘘っ」
美紀さんは慌てて口元を拭う。
あぁ、のびてしまいました。
「これ、使って下さい」
「………ありがと」
一瞬躊躇したみたい。
でも素直に受け取り、私が指差したところを中心に口を拭った。
美紀さんはバッグから鏡を取り出し、顔を確認しだす。
……それにしてもおっきな鏡です。
「…洗って返すから」
「いえ、構いませんよ」
「美紀が構うの!」
「………わかりました」
貸してあげたのに怒られるなんて、ちょっと理不尽です…。
「あ、美紀雑貨屋さんも行きたいんだった。雛ちゃん付き合ってよ」
「…私、ショッピングはちょっと……」
「何よ、根に持ってるわけ?」
「そういうのではないですが…」
「じゃあ決まり!」
「わっ、美紀さん待って下さい!」
急に歩幅を早くする美紀さんにもたつく。
一緒に行こうって誘うくせに一人で突っ走る。
本当に、なんて自由な方なんでしょうか…。