HEMLOCK‐ヘムロック‐


 イオは白雪姫をメイに読み聞かせた。
所々で少女は『どうして?』と質問し、少年は説明したり、どうしてだろうと一緒に考えたりした。


『白雪姫はどうしてキスでめがさめたのかな?』

『うん、きっと王子様だからだよ。小人じゃだめなんだよ』

『オウジサマってどんなひと?』

『金髪でね、白馬に乗っているんだよ』

『キンパツかぁ~。キンパツじゃなきゃオウジサマにはなれないかぁ~』


 メイは残念そうに自分の黒髪を触りながら溜め息をついた。
その言葉にイオもはっとした。自分の髪は栗色だ。幼心に彼はショックを受けていた。


(メイ、金髪の人に憧れちゃったかな……)


『きっと、茶髪や黒髪の王子様だっているよ?』


 イオの言葉は寧ろ自分に言い聞かせていたかもしれない。


『ダメ! 白雪姫のオウジサマじゃなきゃダメなの』


 いよいよイオは、頭を金槌で割られる想いだった。しかしメイが続けた言葉には違う事情があった。


『さいきんね、ママがね、おきないの。ずっとねてるの。わたしがオウジサマになれたら、ママ起きれるのに』


 イオにはメイの母親の事情がよく解らなかったが、彼女の悲しそうな瞳を見るだけで胸が締め付けられた。


ソンナ カオ シナイデ――。

 そうしている内に必然的に2人の目は合う。


『イオの“め”ってママのゆびわみたい』
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