HEMLOCK‐ヘムロック‐

「あさみ、俺見たんだ。お前があの男から……」

「!!」

「今すぐ止めるんだ。俺は信じてるから。あの男と会うのはもう……」

「違う! あたし、そうじゃないの。……あたしがいないと、彼ダメになっちゃうっ」


 あさみはそう言い放ち、非常階段のドアを開けた。
廊下を走り去り、向かう方向は正面出口。


「あさみ! 待ちなさい!!」


 一哉は慌てて後を追うが、出口から右を見ても左を見ても彼女の姿はもう見えなかった。





 “正義”とは、
時に残酷なエゴイズムである――。



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