HEMLOCK‐ヘムロック‐
界と泉は礼二の会社から興信所に戻る途中だった。
泉はその帰路で、界から鞠 あさみが興信所に来た事と、そのあらましを聞いていた。
「ふーん。アサミン本人が依頼取り消しに来たんだぁ。てかその豊島ってマネージャーも怪しいよねぇ~」
「鞠 あさみ本人に黙ってストーカーの対処。まぁアサミンのマネージャーなんだから放っとくワケにはいかねぇしな」
「でも所属の事務所にも内緒でって……、しかもアサミンはストーカーじゃないって否定してんでしょ!? ひょっとして、そのマネージャーがストーカーだったりしてぇ 」
泉はイタズラっぽく笑って冗談を言った。界は特に咎めなかったが、「ドラマ」の見過ぎだ。と心中で突っ込んでいた。
「まぁ、盟が豊島さんに連絡してるハズだからな。調査は依頼が取り消されてなければ、だ」
豊島 一哉や鞠 あさみの話はここで打ち切りとなった。
会話が無くなると泉の心中は再びあの疑問で埋め尽くされた。
どうしても知りたい。
でも自分が知ったら、何かが壊れてしまうかも知れない。
終わらない自問自答の末、泉は素直に欲求に従う事にしてみた。
「ねぇ、界くん……」