私に恋を教えてくれてありがとう【上】
「さぁ、牧田さん
胸の音を聴きますよ?」
淳一郎は聴診器を耳にはめ、胸を出すよう促(うなが)した。
牧田さんは辛うじて理解したようで
病衣をたくしあげようと頑張ったが、うまくいかない。
妻は唇を噛み、苛立ちを隠せない様子だ。
「申し訳ありません
奥様、一度ドア側にきていただいても
よろしいでしょうか」
入口側に居たそらは、妻と場所を交換してもらい反対の窓際に移動し、診察の介助をした。
「 ……うなさいました?」
聴診の最中じっとそらを見る牧田さんに淳一郎がたずねた。
「……はい?」
何か言っているようでそらは少し牧田さんに顔を近づけて
「どうしました?
何かきになりますか???」
ゆっくりたずねた。
「………な……まえ」
牧田さんが細々と言った。
それに、そらは
まだ自己紹介をしていないことに気がついて
「白石 そらです
これからよろしくおねがいします」
母親譲りの朗らかな笑顔をした。
すると牧田さんに異変がおこった。
3人はあっけにとられらた。