私に恋を教えてくれてありがとう【上】
そらは幸せを噛みしめながらも、
ひとまわりも違うんだ!子供だと思われないようにしっかりしないと!と
気を入れなおし、元気よく淳一郎に続き
ワゴンを押しながら病室へと入っていった。
中には患者と一緒に中年の女性がいた。
「牧田さん、おはようございます
私は担当医の今井と申します
よろしくお願いします」
高い腰を深く折り曲げて女性にも挨拶をした。
牧田さんの身体は干からびていて
もうだいぶ年をとっているように見えた。
ベッドネームを見ると79歳と書かれている。
見た目よりは若かった。
ふさっとした白髪が印象的な方で
アルツハイマーがあるらしく、
先生との会話も極めて困難だ。
先生と、この女性の話を聞くところ
この女性は18歳離れた妻なんだとか
今では妻のことさえわからないらしい
途中妻はかすかに涙したりもした。
淳一郎は話をひととおり聞き、診察に入った。