私に恋を教えてくれてありがとう【上】
病室を出た後淳一郎は


「大丈夫ですか?」


と、そらを心配したが



そらは大丈夫だよと曖昧に笑い

仕事に専念した。





多少動揺もする。




泣きながら抱きつかれたうえ

自分は“うちのはなこ”にそっくりなのだから。





しかし、あの年代の人だったら“はなこ”

はたくさんいるのではないか、

そう軽く考えることにした。




淳一郎は眉間にしわをよせ、ナースステーションから出ていくそらの背中を見送り



口を固く結んで踵(きびす)を返した。




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