氷の上のプリンセス

2人でリンクを出た時には、土砂降りの雨が降っていた。


大嫌いな雨のせいで、さっきまでの舞い上がった気持ちは、スーッと消えていき、気分が悪くなる。

街灯がついているおかげで、辺りは暗くない。


『傘忘れちゃった…。』


いつもは、スケート部員用の傘立てに自分の傘が刺さっているけれど、休部している今は、寮に持ち帰ってしまっていた。

「入ってくか?」


『いいんですか?』

「あぁ。こんな降ってたら帰れないだろ。」


そう言って、先輩は自分の紺色の傘を広げた。


これって、もしかして、もしかしなくても“相合い傘”っていうやつ!?


『すみません。
あの、ちょこっとだけでいいので入れさせてください。』


「ちょこっとだけって(笑)。
濡れるから、ちゃんと入れよ。」


先輩が、持っていた傘を少し上に上げて、入るような仕草をした。


うれしい。


好きな人と帰るって、こんなにうれしいんだ…。


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