私に恋を教えてくれてありがとう【下】
“ぶん殴れ”その言葉はどの口が言っているのだろうか。


それを施行したら白石祐樹にその廉がいくのだろうか。




何を考えてそんなくだらない提案をするのか……



華子は胃を締め付けられる感覚を覚え


今すぐにでもその考えの持ち主との電波という繋がりを切断したくなった。





かなしいかな、その餌食は桜の木に引っ掛かり

もう元の場所には戻れなくなっていた。




華子は溜息が電波に乗らないように

彼をなだめることにした。


すると彼はわかってくれればいいと云わんばかり、

いたく満足げに声を戻し始めた。




『また何かあったらすぐに相談のるからさ

ひとりで背負いこまないようにしてな?』





「ん、ありがと。

 じゃぁね……」




華子は祐樹が通話を切る前に


コンマ何秒かからないうちに


こちらの電源ボタンを指圧をかけ押し込んだ。




追われるメス、追いかけるオスの鳩が華子の目と鼻の先を


通過し、華子は苛立ちを隠せず


思いっきりブランコの鎖を握り


満身の力をこめて地を蹴った。



< 48 / 355 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop