ティアラ2
この前みたいに騒がれたくないから、目立たない場所で待っててもらおうと思って詳しく道順まで説明したのに、透吾はやっぱり大学の門の前で車をとめていた。

それに対して文句を言っても「面倒くさい」のひと言で返され、彼は自分のペースで物事を進めていく。……もう慣れたけど。

着いた場所はエツさんのお店。どこへいくのか聞かされていなかったけれど、お店近辺のクネクネした通りは覚えていたから、あたしは途中でここなんだろうなと思っていた。

「いらっしゃい」
「うす」
「みんな、もう集まってるよ」
「どこ?」
「奥の個室。案内するわ」

中へ入ると、待っていたのかと思うくらい、素早く近づいてきたエツさん。彼と透吾は細い通路で立ち止まって、コソコソ話しだす。
その後、エツさんはもうひとりの存在にいま気づいたというかのような態度で、わざとらしくこっちを見た。
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