ティアラ2
「こんばん……っい!!」
「早く案内しろって」
あたしに話しかけようとするエツさんの腰を、グーにした拳で打つ透吾。

「こんばんは」と苦笑いで答えると、エツさんは膨れっ面で彼を睨みながら、あたしに軽く微笑み、前へと歩き始めた。

奥へ進むにつれ、人影が少なくなっていく。表のほうは賑やかなのに、個室がずらりと並ぶこの辺りは、流れるBGMも音が小さくて穏やかなもの。

通路が細くて、1列になって歩く。
「引き受けたんだね、モデル」
列の先頭から話しかけられた。
「あ……はい」
真ん中にいる透吾が邪魔で、エツさんの表情は見えないけれど、声を張り上げて返事をするあたし。
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