ティアラ2
「こいつ、しつこかったでしょ?」
明るい口調で、承諾するまでのことを聞いてくるエツさん。あたしは前を歩く透吾の背中を見つめながら返す。
「ええ、ストーカーなみに」

歩きながらの会話。
透吾は入ってこない。

「ブッ、ストーカーって」
「ほんとひどかったんですよ」

混ざればいいのに、ずっと黙ったまま。機嫌が悪いのかな?

「でも、引き受けたんだ?」
「……まぁ」

ある部屋の前で立ち止まったエツさん。中から、男女の賑わう声が聞こえてくる。

「ここ?」と訊ねても透吾は知らんぷり。彼はこちらに振り向くこともなく、閉めているドアの取っ手に手を伸ばす。
代わりに、にっこり笑ったエツさんが、うんと頷いてくれた。
< 347 / 527 >

この作品をシェア

pagetop