ティアラ2
「どこもいっぱいだなぁ」
観覧席のほうは、早くからきていたひとたちで、すでに埋まっている。
「向こうなら空いてるかもな」
「あ、うん……った!」
急に方向を変えた彼についていこうとしたら、すれ違うおばさんと肩をぶつけてしまった。
「すみませんっ」
慌てて謝ると、おばさんは迷惑そうな目であたしを睨み、連れと一緒に去っていく。

「大丈夫か?」
「え? あぁ、うん平気」
遅れてそばへいくと、待ってくれていた透吾は、うつむき加減だったあたしの顔を覗き込んできて……。
「ん」
突然、肩に手を置いてきた。

クイッと寄せ、あたしに自分の前を歩かせようとする彼。
「……」
抱き寄せられたわけじゃない。ひととぶつからないように、誘導されてるだけ。

たいしたことじゃないのに、なぜかあたしは肩に置かれた手を妙に意識している。
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