海の乙女
あたしはライトから逃げようと必死に体をよじるが、力の差は歴然のためビクともしない。
「ヤダ。離したらどっかに行ってしまうだろ?それに今、街にはたくさんの兵が見張ってるよ。」
「え!」
あたしはライトが掴んでいる手を少し緩めたと同時に思いっきり振り払った。
あわてて窓の外を見ると、確かに街には兵がたくさん立っていた。
「まぁ、君が捕まりたいって言うなら話は別だけど…せっかく脱走したんだからもう捕まりたくないよね?」
「っ……。」
―――…
その後、あたしは甲板でボー…っと海を眺めていた。
これからどうしよう…
街には兵がいるし、この船には海賊。
しかも、この当たりの海域には獰猛な魚がいるって聞くから、泳いで逃げることもできない。
どこにも…いけない。
もう、あたしの居場所なんてないんだ…。
「あ!」
いきなりライトがあたしの後ろで大声をあげたから、思わずビクッとしてしまった。
「な、なに…?」
「そういえば名前は?」
「名前?」
「呼ぶとき不便だろ」
「…聞いてどうするの?どうせすぐに売るんでしょ?」
「売る?何で?」
「……あたしは、人魚のなかでも特殊だから…。」
「特殊…?」