君には、絶対に…
「大会だよ、大会!大会に呼べば、今井は嫌でも洋介のことを意識するぞ!だって、大会の日は、俺らが“主役”!“ヒーロー”になれる日だからな!まぁ、俺に全部任せとけ!な!?」

確かに、去年出た大会がもう来月に迫っている。

去年の優勝チームだから、シードチームとして、招待されていたこともあって、今年も出場すると決まっていた。

でも、あの大会に出たって、簡単に意識してもらえるはずがない。

学校内でも有名な睦と将人が一緒のチームにいるのに、バスケ部でもなく、バスケが巧いわけでもない俺のことを意識しろっていう方が難しい話だ…。

話が出来るようになるかさえ、今は分からない…。

「お~い、そろそろ練習始めよう。」

先にコートで黙々とシュート練習していた将人が、痺れを切らしたように、俺と睦に向かってそう言った。

その言葉を聞いてすぐ、いつものように練習が始まった。

でも、俺は練習に集中することが出来ずにいた…。

その原因は、睦の一言で、期待なんかしても仕方がないと思っていたはずなのに、心のどこかで、今井さんと話が出来るかも知れないという期待が生まれてしまったから…。

もしかしたら、今井さんと仲良くなれるかも知れないなんていう、淡い夢を頭に思い浮かべてしまったから…。

大会が近付くにつれて、練習の日数は増えたが、日に日に、俺の頭は今井さんのことだけしか考えられなくなっていた…。

大会が近付いてきているからこそ、集中して練習しなきゃいけないのに、俺だけミスを連発して、睦と将人に迷惑をかけっぱなしだった…。
< 34 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop