君には、絶対に…
9月1日。
今井さんのことばかり考えながら、バスケの練習をしているうちに、夏休みが明けて、中学2年の2学期が始まった。

久しぶりに今井さんの姿を見ただけで、夏休み前以上に胸が高鳴っていた。

前以上に話しかけたいと思いながらも、結局声もかけられないまま、俺は自分の席に座り、退屈な授業を受けていた。

退屈な授業中、俺は窓の外に見える青空を見ながら、色々と考え込む。

あと3週間後には、もう大会がある。

睦も将人も、本気で2連覇を目指して練習している…。

バスケに集中しなきゃいけない時期なのに、俺1人、他のことにばかり気を取られている…。

こんなんじゃ、2連覇なんてとてもじゃないけど、手が届かない。

だから、大会が終わるまで、今井さんのことを考えるのはやめよう。

練習に集中して、今年も何とか優勝出来るように頑張って、もし、2連覇出来たなら、今度はちゃんと話しかけようと心に決めた。

そう心に決めてみると、案外すっきりした気分で、早く練習したい気持ちにまでなってくる。

でも、そんな気分は、すぐに一掃される…。

「ねぇねぇ、今年もあの大会に出るの?」

俺と睦が昼休み中話していると、クラスの女子が群れを作って話しかけてきた…。

「もうすぐだよね!?今年は応援しに行くからね!!」

去年の大会のことを覚えている人がいるだけでも、本当はありがたいことなのかも知れないけど、あんまり話したりしたことない人が話しかけてくるのは、やっぱりむかつく。

だいたい、今これからどういうスケジュールで、どういう練習をするのか真剣に話しているんだから、今話かけてくること自体がむかつく。

自分の中で、苛立ちがどんどん膨らんでいき、無意識に呆れながら、小さくため息をついていた。

でも、そんな俺を他所に、睦は何かを思い出したように、勢い良く立ち上がった。

そして、群がっていた女子を掻き分けて、一目散に歩き出した。
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