ルージュの森の魔女
「取り敢えず立ち話もなんだから座って話しましょう。飲み物は紅茶でいいかしら?」
「…いや、結構。喉は渇いてないので……」
そう断るとアリーナは見透かすかのように瞳を細め笑う。
「あら、嘘よ。あれだけ森を歩いていて渇かないはずないわ。――大丈夫、毒は入ってないわよ」
その言葉に、躊躇したものの事実レオドールたちも喉が渇いていたので有り難く頂くことにした。
アリーナはシナモンアップルパイを切り分け、紅茶とともにテーブルに並べていく。
「これさっき私が作ったの。味には自信があるから食べてみて」
「うわっ!これめちゃくちゃうまいっ!」
出されて早々アップルパイに手をつけたジンはあまりの美味しさに感嘆の声をあげた。
そんな様子にレオドールとルイスは呆れた眼差しをむけ同時に溜め息をついたのだった。
「…それで、帝国が私に何の用かしら?」
紅茶を飲み、皆が一息ついたところでアリーナは早々と話題を出す。
彼らが帝国の人間であることは、先ほどの自己紹介でわかっている。
しかも厳選されたエリートたちが集まる第1部隊のトップが自分を訪ねて来るということは帝国にとってかなり重要なことに違いない。
アリーナは紫紺の瞳に鋭い光を灯し、目の前の翡翠の瞳を見つめた。
「此度、ゼノクロス殿の元を訪ねたのはあることについて聞きたいからだ。……ここ最近、魔物が急に増えていることは気づいておられるか?」
「ええ…、知ってるわ」
レオドールの問いにアリーナは是と答える。
魔物は普段昼間は姿を見せず、森の深淵に身を潜めている。なのにここ2〜3年前から急激に数が増え、昼夜関わらず人里や人間を襲い始めたのだ。
しかも、その力は通常の倍にも増しており、庶民や一般兵では太刀打ちできないほどになっていた。