リアル
そうしないと、人の死に直面した時に自分の心が折れて、精神的な痛みを抱える事に成るからだ。
「明日、母さんのお見舞いに行きたいんだがね。我侭を云って申し訳ないけれど、付き合って貰えんかね?」
坂部は逡巡する。仕事外での付き合いを完全に禁じられている訳では無いが、暗黙の了解で、利用者との距離を取ると云うのが職場の慣わしに成っている。だが、その様な距離の取り方が坂部は微妙に苦手だった。家族の様に付き合いたい。坂部の根底にあるのは、そう云った優しさから来る思いの方が大きく、慣わしや体裁よりも、自分の心が求める事を選ぼうと坂部は思い直す。
「時間は如何します?」
坂部は、あえて時間を指定する事で、田中の心に掛かる負担の軽減を図る事にした。事務的と云うか、必要以上に丁寧に受け答えしたりすれば『申し訳ない』と云う思いが田中の心の中に広がる恐れがあるし、何よりも、不吉な考えを持ってしまった自分への反省の意味も込めて田中の申し出を受ける事にした。
―お見舞い位、別に良いよな
坂部は索漠とした思いを拭い去る様に、田中とお見舞いに行く為の時間を決める事にした
*
「明日、母さんのお見舞いに行きたいんだがね。我侭を云って申し訳ないけれど、付き合って貰えんかね?」
坂部は逡巡する。仕事外での付き合いを完全に禁じられている訳では無いが、暗黙の了解で、利用者との距離を取ると云うのが職場の慣わしに成っている。だが、その様な距離の取り方が坂部は微妙に苦手だった。家族の様に付き合いたい。坂部の根底にあるのは、そう云った優しさから来る思いの方が大きく、慣わしや体裁よりも、自分の心が求める事を選ぼうと坂部は思い直す。
「時間は如何します?」
坂部は、あえて時間を指定する事で、田中の心に掛かる負担の軽減を図る事にした。事務的と云うか、必要以上に丁寧に受け答えしたりすれば『申し訳ない』と云う思いが田中の心の中に広がる恐れがあるし、何よりも、不吉な考えを持ってしまった自分への反省の意味も込めて田中の申し出を受ける事にした。
―お見舞い位、別に良いよな
坂部は索漠とした思いを拭い去る様に、田中とお見舞いに行く為の時間を決める事にした
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