リアル
第三章 交錯
「混んでるなぁ」
 坂部はステアリングを握り乍ら一人で呟く。日曜日。関東の最高気温は2℃だと天気予報は云っていたが、体幹温度はもっと厳しいので無いだろうかと、坂部は身震いし乍ら車のヒーターの温度を調整する。
 昼の十三時。田中の家に迎えに行くと約束をした昨夜、坂部は何故か中々寝付く事が出来ず、目覚ましの音に気付かず寝過ごしてしまいそうに成った。
 スッキリとしない天気。空にはどす黒い雲が辺り一面に広がり太陽の光を遮っている。この調子だと雪が降るのではないだろうか。坂部は軽い溜め息を付き窓の外を見る。街には、休日を謳歌し様と至る所に人が溢れている。
「ギリギリ間に合うかな」
 信号が赤に変わり丁寧にブレーキを掛ける。職場の車を借りている手前、乱暴に扱う事は出来無い。車のデジタル時計。約束の時間迄後三十分。正面の信号が青に変わり車が一斉に流れ出す。坂部はアクセルをゆっくり踏み込み、車を裏道へと向ける。ギリギリの車幅。坂部は神経を集中して車を走らせ、目的の田中の家へ急ぐ事にした。

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