リアル
運命論だ。だが、坂部にはこれと云った信仰心は無く、確実だと云う価値観等は持ち合わせて無く、そんな中で必死に辿り着いた言葉が運命論的な語彙にしかならず、言葉足らずな自分に情けなさを覚え乍らも、坂部は必死に田中に言葉を掛ける。
「僕は、別段信仰心がある訳では無いですし、話している通り、揺らぎない意志を持っている訳でもありません。だけど、福祉の仕事を続ける限り、何れはぶち当たる壁です。そう云う意味では、田中さんとの出会いは、僕に取っては運命的に出会った人です」
「じゃが……」
「以前、田中さんが仰っていた通り、この国の福祉は年々厳しく成っていますし、人口比率から見れば、高齢者の人口比率の方が、若者が占める人口比率を圧倒するのは目に見えてます。でも、だからと云って、国の財政難の一部を弱者である高齢者に丸投げして良いと云う事には成りません。勿論、高齢者に全く責任が無いかと云えば、一概にそうだとは云えませんが……」
 坂部は其処から先の言葉を云い澱み、田中も坂部の真意を汲み取り頷く。
現在、日本の医療保険は破綻寸前に追い込まれている。
昭和三十六年に確立され、現在も機能している制度である国民皆保
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