本当に愛おしい君の唇
第26章
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 五月最後の週末に、治登は直美と会った。


 新宿でもあまり人のいない場所で待ち合わせ、都内にある某ホテルへと向かう。


 治登は多少値の張るホテルでも、予約なしで大丈夫だと思っていた。


 それに実際、飛び込みで入れるホテルもたくさんあるのだ。


 二人で並んで歩く。 


 すっかり様になっていた。


 もうすぐこの密会のような状況も終わる。


 治登が有希と離婚し、直美も洋介と離婚するからだ。


 そうなれば、バツイチ同士で同棲のような生活を始めるつもりでいた。


 治登は今から週末を過ごす予定のホテルの近くの地理を事前にケータイで調べていて、どこに何があるか、ちゃんと把握している。


 ホテルに辿り着いて、フロントに近付くと、


「いらっしゃいませ」
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