飛べない鳥
『…風邪引くから』


美咲は素直にドライヤーを受け取り、長い髪を乾かしていった。



『遥斗…優しすぎだよ…』


『優しくねぇよ、俺は最低な人間だ』



『私、そういう遥斗のとこ好きだよ??』



美咲はドライヤーのスイッチをオフにし、俺に近寄ってきた。



綺麗な美咲が俺に近付いてくる。



『…何?』



告白されたと俺は気付いていなかった。



冗談だと勝手に認識していた。



美咲の大きな瞳が閉じていく。



…またか。



俺は首を右に向け、身を守った。



美咲はこの前と同様、
悔しそうな顔をしていた。

でも今日の美咲は違った。


俺の左頬に、唇を当ててきたのだ。


一瞬だけ触れた、美咲の柔らかい唇。


俺は慌てて美咲から離れた。
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