飛べない鳥
『なっにすんだよ!!』


俺は袖で左頬を拭いた。


美咲は口に手を当てて笑っている。



『遥斗のほっぺにキスしちゃったぁ~!!』



俺の目の前で嬉しそうにピースサインを作る美咲。


俺は美咲を呆れた顔で見ることしか出来なかった。



『もう二度とすんじゃねぇ…』



『今度はちゃんと口にするよ?』



『…帰れ!!』



昔の俺ってこんなに人間とふざけあっていたか?



昔の俺と、今の俺、


何かが変わった。


自分でも分かる。



でも…俺にはただひとつだけ足りないモノがあった。


『私、あの屋上の女の子に負けないから!!』



玄関で美咲が唯に宣戦布告していた。



『…やめとけ』



『遥斗への気持ちは私のが大きいから!あっ傘貸してくれてありがとうね、今日はごめんね?じゃあまた学校で』



『気をつけて帰れよ?』


美咲は数回手を振り、
俺の前から消えて行った。
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