飛べない鳥
ずっと先まで続くグランドが、見えなくなった気がした。



『それで?』



『誰かの家に二人で仲良く入って行ったぞ?』



『…そっか…』



その家とは唯の家かもしれない、葵の家かもしれない。


唯と葵は隣同士の家だから。



『話さなければ良かった…よな…ごめんな』



響が俺に謝ってくる。


俺の心は、本当は動けなくなるくらいダメージを受けたが、俺は無理をして体を動かした。


響が悪いんじゃねぇ。


俺がバカなだけだ。




『響のせいじゃねぇよ?
しょうがねぇだろ?あいつは唯の幼馴染みなんだから』



『遥斗…会ったことあるのか?そいつに』



『昨日な。ライバル心丸見えだったよ』



『…幼馴染みか…厳しいな…』




『橘ー沢村ー!ちゃんと走れ!!』



体育の先生が俺達の名前を呼び叫ぶ。


俺達は仕方なく、走ることにした。



俺の心は、崩れ始めた。
< 178 / 354 >

この作品をシェア

pagetop