飛べない鳥
俺と響は、走るという行為をやめ、歩いていた。



この…濁った空の下を。



『あっ俺、思い出したことある』



『…何?』



『昨日、菊地唯を見た!』


『え?』



ザワザワと木が揺れる音と、生徒達の走る足音が聞こえてくる。



でも一番大きい音は、
俺の心臓の音だった─…



『先生の家からお前の家に向かってる途中に会った。あの場所は、俺達がいた施設の近くだったなぁ…』



『…唯は一人だったか?』


…お願いだ、響─…


《一人》と言ってくれ…



『一人じゃなかった、男と一緒だったぞ?学ラン着た、すげぇかっこいいヤツと』



……ドクン……



学ラン…


かっこいいヤツ…



幼馴染み…



葵──………



《俺の方が唯を知ってるんで》




助ケテクレ。
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