飛べない鳥
『唯…俺…す…』


この感情が押さえられなくなり、自分の気持ちが口から溢れそうになった。



『遥斗?意味がよく分からない…』



俺の言葉を唯は理解していないような顔を浮かべていたことに、俺は気付かなかった。



もう…聞きたくない。



『俺…すげぇ似合ってると思う。唯と葵』



俺から出た気持ちは、
偽物の気持ち。


俺は傘を持たず、その場所から走り去った。



『遥斗!!ちょっ待てって!』



響の呼び止める声を無視し、校門へと一直線に走っていった。


葵を横切る。



『…俺の勝ちだな』



葵はこう呟いた。




…うるせぇ…やめろ…



俺はこの強く降る雨の中、止まることなく走っていった。



そして走り疲れた俺は立ち止まり、空を見上げた。



後ろから誰かの足音が聞こえる。


見上げた空に、透明なビニール傘が現れた。




『…お疲れ』




この空は、俺の代わりに泣いてくれているみたいだ。



…さよなら、唯。



…さよなら、俺の初恋。
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