飛べない鳥
他に理由などない。


今日という日の記念にしとこう。



そして俺は帰ると、薬局で買って来た毛染め液を取りだし、自分で染めた。


黒に近かった俺の髪の毛は、数時間後には、明るい茶色になっていた。


まるで、葵とは正反対の姿になっていた。


唯を振り向かせようとかそんな理由じゃない。



好奇心─…それだけだ。



翌日、響は俺の変化を見て、最初は驚いていたが、でも喜んでいた。



『俺も染めたい!』



などと言い、
本当に次の日染めてきた。


時が過ぎても、
やはり唯が気になってしまう。



テストとかで憂鬱な学校生活も、憂鬱などとは思わなかった。


唯を見ていたら、
そんな気持ちも吹っ飛んでいた。


相変わらず葵は毎日のように唯を迎えに来ていた。



もう慣れたせいか、葵を見ても何とも思わない。



でも悔しいと思ってしまう─…




夏はもうすぐそこまで来ていた。



まだ俺は唯が…



狂おしいほど…


愛しかった。
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