飛べない鳥
俺は唯が助けを求めているとき、いつも違うところや、違う場所を見ていた。


何してんだよって自分を責める。



…俺は何も分かっていなかった。




───………夕方の教室にいるのは俺と響だ。



机には消毒液と、ピアッサー。



『遥斗?いいか?』



『あぁ…』



─…ガシャンッ…



耳に針が貫通した。


響がゆっくりとピアッサーを耳から離し、ふぅと息を吐いた。



俺はこの日、左耳に二個ピアスの穴を開けた。


思ったよりは痛くなかったが、暫く経つと痛さが出てくる。


俺は鏡で耳を見る。


色違いのファーストピアスが耳に並んでいた。


耳の周りが少しだけ赤くなっていた。



『さんきゅ』



『でもなんでピアスなんかいきなり開けるんだよ?』



『気分?』



この日を境に、自分を変えたかった。



ただそれだけだ。
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