飛べない鳥
上を見上げると、そこには顔をちょこんと覗かせた杏の姿があった。



『杏…』


杏は笑顔でこちらに手を振っている。


正直、俺はどうすればいいのか分からなかった。


俺は今日、杏に最低なことをしたから。



『遥斗!!私、遥斗のこと想っていてもいいかな?
やっぱね、遥斗を越えられないと思うの…迷惑じゃなければ…ずっと好きでもいいかな…』



精一杯の杏の想いが、痛いくらい分かるよ。


俺も杏みたいな恋をしてるからな。



『迷惑じゃないよ。ありがとな、杏!』



俺がこう叫ぶと、杏は、泣きそうな顔をして、顔をを引っ込めた。



『杏ちゃん、可愛い告白だったな。なんか俺と杏ちゃん一緒のこと言ってるな』


『そうだな』



杏…いつかお前に新しい彼氏が出来たら絶対紹介しろよな。



そしたら頭を撫でて祝福してやるからさ─…
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