飛べない鳥
『俺さ、あんたに感謝してる』


母親は涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげて、俺を見てきた。



俺は手を強く握り、話を続けた。



『まだあんたのことは許してねぇけど…俺をこの世界に連れてきてくれたことに感謝してる』



『遥…斗…』


俺は顔を上げ、唇を噛み締めた。



『小さな頃に教えてくれたよな?空を見上げて泣くとご褒美がもらえるって』



俺の瞳から滴が流れた。



『ご褒美ってさ…虹だったんだな』



俺がさっきあの場所で泣いていたとき、空を見上げて泣いたんだ。


空を見上げて泣いたら、涙が太陽に反射して虹のようにキラキラと世界が輝いて見えたんだ。


響もきっと虹が見えたのだろう。



そうだろ?…母さん。



『遥斗…お母さんね、あなたを施設に送ったことをすごく後悔したの…でも私は恐くてあなたを迎えに行けなかった…』



初めて母親の口から真実を聞いた。
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