飛べない鳥
勢いよく閉じたドア。


その余韻が階段に残っている。



『なんだ…あれ』


息が出来なくて苦しくなった。


菊地唯の言葉が、俺の心を締め付けた。



初めてあんな事言われた。

何がしたいんだ?

菊地唯は俺に何がしたいんだ?


よくわからない。


俺はそう簡単に人間を信じれない─……


俺は教室へと戻る事にした。


でも、頭の中に菊地唯の言葉が駆け巡っていて、
なかなか前へと進めなかった。



やっとの思いで着いた教室に入る。


『遥斗!お前どこに行ってたんだよ!』


満面の笑顔で駆け寄るのは響だ。


俺はそんな響を無視し、
席へと着いた。


『お~い、遥斗~??』


響が俺の肩を掴む。


俺は響の方を見上げた。


『ん?』


『…お前はいいよな』



響が羨ましい。


人間を好きになれて、
その好きな人間と話せて、幸せそうだ。
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