飛べない鳥
駅に到着するのに随分と時間がかかった。


でもこの後、何も予定がないから別に良かった。


俺は寄り道をせずに、
マンションに向かう。


上を見上げると、電線にたくさんの雀が一列に並んで鳴いていた。


きっとお喋りをしているのだろう。



俺は歩くのをやめ、雀を見ていた。



『楽しいか?』


俺の質問に無視をし、雀達は楽しくお喋りを続けている。


『俺と変わってよ…
鳥になりたいんだ…』



雀を見ていたら、
あのヒナの事を思い出してしまった。


あのヒナがもし死ななかったら、立派な鳥に成長していただろうか?


また罪悪感が襲う…


でもきっと鳥になれても、俺は飛べなかっただろう。


飛べない鳥になっていただろう…



だって俺には、あれがないから──………
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