飛べない鳥
『…元カノが…もう一回寝てくれたら忘れてあげるって言ったから…寝ただけ』


『は?断りゃいいだろ?何でそんな簡単に寝るんだよ』


更に強くなる春風。


洗濯物が激しく揺れている。


『あいつしつこかったんだよ!!別れた後も連絡してくるし、寝るだけで忘れてくれるならいいかなって』


は?響、お前はバカか?


そんなの口実に決まってんだろ。


また同じ事言ってくるかもしれねぇじゃん。



『響ってそんな軽い男だったか?』


『…さぁな…』



『だから人間は信じれねぇ。』


冷たい空気が、
俺達を包み込む。


あの隣の部屋の床ぐらいの温度で、俺達を包んだ。



『…………』



響は黙ったまま、
一点の方向を見ていた。



俺は床に座り、
怒りを静めた。
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