飛べない鳥
《じゃあね、遥斗》


今でも耳の中に響いている。



唯の甘い声。



俺は耳を押さえながら教室に行くことにした。



『…キャラじゃねぇな』



今の俺が俺じゃないみたいだ。


偽者か?



俺はこんな自分が眠っているなんて知らなかった。



恋をすると、人は変わるんだ──……



『あっ遥斗~!!』



教室の窓から大きな声で叫ぶ響。


俺はそんな響に呆れつつ返事をした。



『なに?』



響にバレないように、
下を向いて赤い頬を隠した。


響が俺の方に向かってくる。


俺はそこに立ち止まり、
響を待った。



響が勢いよく走ってくる。


そして息を切らした響が、俺の前に到着した。



『はぁ…はぁ』



『何だよ?』



すると響の目が、
真剣な目に変わった。



『お前!!
どういう関係なんだよ!!』



胸ぐらを掴み、俺に訴えた。



『は?』
< 95 / 354 >

この作品をシェア

pagetop