華の咲く場所

彼の屋敷は、大きかった。

屋敷の庭はとても藝術的で、芍薬、牡丹、虞美人草、睡蓮、白蓮、菊、薔薇、天竺牡丹とさまざまな花が我が身を誇るように堂々と咲いていて、屋敷の中にはいたるところに趣味の良い調度品が趣味よく配置され、まるで小さな美術館のようだった。

同じ洋服を着た召使いが何人もおり、食事を作る担当のものがいて、屋敷の中は常に綺麗に保たれていたし、3食バランスよく出される食事と、昼前と夕前に出されるお茶菓子は、今まで食べたこともないほどにおいしかった。

そしてその誰もがとても優しく、今まであんな仕事をしていた、その前は貧しい村からさらわれてきたような私を、とても温かく迎えてくれた。

それに驚いたのは、彼は、私を妻として―――正妻として、迎えたことだった。

私はてっきり私を―――身分の低い私だからこそ、愛人にするつもりだと思っていた。

それに、私以外は妻を娶ろうともしなかったから、それにも驚いた。

そう言ったら、こっぴどく紅藤様に怒られた。

「お前の今までがなんだ、お前の身分がなんだ、それは全て歪んだこの世に押し付けられたようなものだろう!そんなものにお前が屈したら、お前は本当にその程度の人間に自分を貶めることになるんだぞ!そんなことを言ったら2度と許さない!」

怒られているのに、嬉しく感じてしまって、涙を流して笑ったら、相当慌てふためいて、

「・・・お前は時々何を考えているのか、全くわからないよ朱蘭」

お手上げとばかりに私を抱き締める紅藤様に強く抱きついた。

それから、1年ほど、私は屋敷で悠々自適に過ごした。

最初の頃こそ何かしなければと思い、屋敷の掃除や、食器の後片付けくらいやろうとすると、全て召使いがやってしまい、私は何もさせてはもらえなかった。

やらせてと言っても、「朱蘭様にそんなことさせられません!朱蘭様はいいのですよ」そういってみんな私から仕事を奪っていった。



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