Ghost Lovers
「い…いらっしゃい、まセ。」
ぎこちなく挨拶しつつ立ち上がる。
微妙に間合いを取りながら、
女性の様子を伺った。
地味な洋服も、長い黒髪も
全部雨に濡れてぽたぽたと雫が滴り落ちる女性。
その姿は、明らかに不気味でしかないが
一般の人間のようにも見える。
しかし、その顔の大半を覆い隠すような大きなマスクを除いては。
「これ…タオルです。使ってください。」
凜から託されたバスタオルを差し出した手を
掴まれやしないかと汗が滲んだが、
女性は小さな声で「ありがとう」と呟いて
素早く受け取っただけだった。
「えと、お名前は?」
「……貞子です。」
(そのまんまだ……!)